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21/11/07 ユメモナクオソレモナク
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―――― 今日産まれた赤ん坊がベッドの上で死ぬために。

上下巻にして計800ページ。しかも小説のようなページに印刷されていない余白なんてほとんどない、全てのページにぎっしりとも字が詰まっている。こんな本を誰が一気呵成に読み切るというのか。まったくどれほどまでに作者は言いたいことがあるというのだ、前著がピューリツァー賞を獲得した?だとしてもこれほどまでに長い読み物、例え知的探求心の一代結晶であろうと容易く読むことなど―――――――

読み始めてからの二週間、あっという間でした。ありとあらゆる瞬間に於いて脳裏からこの本が離れることはなかった。

本書は題の通り文明崩壊を扱う。著者は生物学者として学問の道に入り、その後は研究範囲を広げてゆき、背表紙に書かれた紹介によると進化生物学、生物地理学、鳥類学、人類生態学などその専門は広範にわたっており、当然この書に於いて文明の崩壊も地球的生物的人類的な、すなわち総括すると環境という視点から書かれている。

ある文明が崩壊するに際しては必ずその背景には環境の変化がある。環境は往々にして人間の命よりも長いスパンで変化を繰り返しているが、人間は環境が最も人間に優しい瞬間が常態であると錯覚し、好都合な時の環境を土台にした文明を築く。従って環境が人間にとって好都合であるピークを過ぎ、不都合な状態へと変化すると環境は人間を支えることが出来なくなってしまい、その文明は存続の危機に立たされることになる。

この本ではそのような危機に立たされた数多くの文明社会を例として取り上げている。過去の文明社会からは示唆に富んだ教訓と生き延びるための鉄則を。著者の言葉を借りれば”壮絶に加速し続ける二頭立ての馬車レースを繰り広げる現代文明”からは直面している危機とそれに対する努力を紹介してくれる。

当然、日本についても言及している。詳細は下巻の冒頭で語られるが日本は過去に森林の皆伐を回避した実績がある。現代日本に住み、罪悪感を感じながらも浪費する生活から抜け出せない俺のような人間には意外に感じられた。この問題に関して日本は無力ではないという事実を異国人から、それも歴史的観点から言及されてようやく気づく盲目ぶりには情けなくなるが、それでもこの三巻冒頭を読んだ日本人は誰もが「やるな徳川」なんて思うだろう。いや、狸はやりよるぜよ?

過去の文明が崩壊したことを現代文明が持っている科学力が全てを解決してくれるなどという幻想は早々に棄てた方が良い。そんなことを本気で信じているようなお気楽な人間にはきっとこんな本は必要なく、幸せなことに今後20年を生き、そしてその後に環境破壊に対して有効な手立てを打てなかった責任ある立場の人々を糾弾するだろう。

だが僅かでも科学という諸刃の剣を疑う人には、この本は消え去っていった過去の文明から教訓と何より私たちが知りたいであろう現段階での環境の持続性と有効な手立て、そして著者や現代社会が考え実戦している環境破壊への手立てを教えてくれる。

その圧倒的な文量に最初は戸惑うかも知れない。だが読んでいる最中、今自分が読んでいる部分がその先で語られるであろう現代の環境問題に繋がるという約束があるお陰でこの本を途中で投げ出そうと思うことは無いはずだ。
だからとにかく手にとって読み始めて欲しい。下巻の第16章で筆者が30年後に自分と同じ年齢として生きることになるだろう息子達(すなわち俺と同世代人)の不幸を綴り、それでも慎重な楽観論者としての側面を見せる頃にはきっと貴方もこの本を誰かに勧めたくなるはずだ。

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